尿モレの仕組み
自分の体に起きていることを正しく理解することが、前向きなケアの第一歩。
ここでは、尿モレが起こるメカニズムと、主なタイプについてわかりやすくご紹介します。
実はみんな
尿モレに悩んでいる？
尿モレ（尿失禁）は、自分の意思に関係なく尿がモレてしまう状態で、特に女性や高齢者に多く見られます。
「咳やくしゃみでモレてしまった…」「トイレまで我慢できなかった…」 ———そんな経験はありませんか？
デリケートな悩みゆえに、誰にも相談できず一人で抱え込む方も少なくありません。しかし、決して珍しいことではなく、30代女性の約3割、40代以上では2人に1人が経験しているともいわれます。
大切なのは「快適に過ごしたい」という思い。まずは自分の体を知り、無理なくできるケアから始めてみましょう。
女性のからだの仕組みと尿モレ
女性の尿道が
男性に比べて短い？
女性の尿道は約3～4cmと短く、男性（約16〜20cm）に比べて尿モレが起こりやすい構造です。
また、男性の尿道がS字であるのに対し女性の尿道はまっすぐ下に向かっている点も要因となります。
出産経験や加齢により
骨盤底筋が弱くなる？
骨盤底筋群（骨盤の底にある内臓を支える筋肉）は、膀胱や子宮を支え排泄をコントロールします。加齢や妊娠・出産、重労働で弱まると尿道を締める力が低下し、尿モレが起こりやすくなります。
女性ホルモンの減少が
影響することも？
更年期になると女性ホルモンが減少し、骨盤底の筋肉の力が徐々に弱まっていきます。これに伴い尿道を締める筋肉も衰え、尿をコントロールする力が低下することで、日常生活の中で尿モレが起こりやすくなります。
尿モレのタイプと症状
腹圧性尿失禁
- 症状
- 咳やくしゃみ、大きな声で笑う、走ったり跳んだり、重いものを持ち上げた時など、お腹に力を入れた時に、尿がモレてしまいます。
- 原因
- 妊娠・出産や加齢などによる骨盤底筋のゆるみが原因で、尿道や膀胱の位置が変位したり、尿道を締める力が弱くなったりして起こります。女性で最もよくみられる尿モレのタイプです。
切迫性尿失禁
- 症状
- 突然強い尿意を感じ（尿意切迫感）、トイレに行くまでに我慢できずにモレてしまいます。
- 原因
-
- 神経因性：脳からの排尿指令が脳血管障害などでうまく伝わらずに起こります。
- 非神経因性（特発性）：加齢や骨盤底筋のゆるみなどが原因とされます。
- 過活動膀胱：尿が十分に溜まっていなくても膀胱が収縮してしまい、突然強い尿意（尿意切迫感）を感じます。
過活動膀胱について
過活動膀胱の約半数は間に合わずに漏れてしまう切迫性尿失禁があり、頻尿などの症状を伴う場合もあります。過活動膀胱は適切な治療をすることで症状を改善させることができますので、ぜひ泌尿器科を受診してください。
混合性尿失禁
- 症状
- 「腹圧性尿失禁」と「切迫性尿失禁」の両方があります。「咳やくしゃみなど腹圧で」も、「急にトイレに行きたくなって間に合わず」も、両方の場面で尿もれが起こります。
- 原因
- 「腹圧性」と「切迫性」の両方の原因をあわせ持っている状態です。
その他の尿失禁
- 溢流（いつりゅう）性尿失禁
- 尿が出にくく、膀胱内にたくさん残った尿があふれるようにじわじわモレてしまう症状です。
- 機能性尿失禁
- 足腰が悪くてトイレに行くまで時間がかかる、認知機能の低下がありトイレがわからない、トイレまで行けない、下着の処理ができないなど、生活環境や運動機能に問題があり、排泄動作が間に合わなくなる症状です。
- 夜尿症
- 夜、睡眠中に尿がモレてしまう症状です。過活動膀胱でも夜尿を伴うことがあります。
どんな対策が必要？
生活習慣の改善
「肥満」や「便秘」は、
尿モレにつながることも？
脂肪やたまった便が膀胱を圧迫・刺激し、尿モレを引き起こすことがあります。
日々の食事と適度な運動で体の内側から整えましょう。
水分を過剰に
取りすぎていませんか？
水分やカフェインをとりすぎると、尿量が増えて尿モレが悪化することも。
体重×20～25mlが目安。排尿日誌でチェックしてみましょう。
おしっこは
尿意を感じてから行く！
早めにトイレに行く習慣は膀胱に尿が溜まりにくく排尿リズムを乱す原因に。
膀胱訓練で、きちんと尿を溜める力をつけましょう。
腹圧をかけて排尿する
クセに注意
おなかに力を入れて排尿するクセは、膀胱に負担がかかります。
無理に絞り出そうとせず、自然な排尿を心がけましょう。
尿モレ対策トレーニング
骨盤底筋トレーニング
排泄に関わる筋肉を鍛え、排泄コントロールをスムーズに行うのが目的です。活動膀胱に対しても有効性が認められています。
それぞれ10回を1セットとし、1日3〜5セット行うことをおすすめします。
トレーニングを行う際は、呼吸との連動が重要です。息を吐くときに骨盤底筋を締め、吸うときに緩めることで、より効果的なトレーニングになります。うまく締められているか分からない場合は、尾骨に手を当てながら行うと、筋肉の動きがわかりやすくなります。慣れてきたら、さまざまな姿勢で行うことができるので、家事をしながら・テレビを見ながら・乗り物に乗っている間など、すきま時間を活用して行ってみましょう。
あおむけで（基本）
- あおむけに寝て、足を肩幅に開き、膝を立てる。
- お腹の力を抜き、息を吐きながら肛門と尿道を締める。（おへそに向かって膣を引きあげる感覚で）
- そのまま、ゆっくり５つ数える（ゆっくりトレーニング）。途中で力が抜けたら締めなおす。
- ゆっくり息を吸いながら緩め、50秒リラックスする。10回で1セットで行う。
- 「締めて→緩めて」を素早く繰り返す（はやくトレーニング）も10回で1セットで行う。
四つんばいで
- ひじをついた四つんばいになり、足は腰幅に開きます。足の指を立て、背骨がまっすぐになるようにします。
- あおむけ（2.〜5.）と同じ動作を行う。
座った姿勢で
- 椅子に座り、足を肩幅に開いて床にしっかりつける。背筋を伸ばし、顔を上げる。
- あおむけ（2.〜5.）と同じ動作を行う。
立った姿勢で
- 手と足を肩幅に開き、体重を腕にかけてテーブルにもたれる。背筋を伸ばし、顔を上げて肩の力を抜く。
- あおむけ（2.〜5.）と同じ動作を行う。
膀胱訓練
少しずつ排尿を我慢する時間を延ばすことで、膀胱に溜めることのできる尿量を増やすトレーニング。「トイレが近い」「回数が多い」「我慢できないでモレる」など、尿意切迫や頻尿傾向の方におすすめです。
※切迫性尿失禁がある場合は薬物治療と合わせて行うことをお勧めします。
①排尿日誌をつけて、排尿パターンをつかむ
1日の飲水量や排尿の時間・量を記録し、自分の排尿間隔や傾向をつかみましょう。
トイレに行くタイミングを知ることが、膀胱訓練の第一歩です。
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②トイレ間隔を少しずつ延ばす
尿意を感じてから、5分ずつトイレに行く間隔を伸ばしていきます。 尿意を感じてから5分我慢できるようになったら次は10分、15分、20分と延ばし、1時間まで延ばせるように訓練します。
それでも症状が改善されない場合は訓練方法の見直しや、泌尿器科の受診をおすすめします。
尿ケア専用品で不安を解消
尿モレに悩む方の中には、生理用ナプキンなどで対処している方も多くみられます。
しかし、注意したいのは、「尿モレ対策として生理用ナプキンを代用できない」ということです。形状は似ていても、尿は血液と違って固まることはないので、経血の吸収のための生理用ナプキンでは十分に吸収することができません。
尿モレのケアをする際は、尿ケア専用品を選ぶことがおすすめです。
当社調べ
医師に
どう相談したらいい？
ご自身の尿モレ症状について知る
まずは、ご自身の尿モレ症状について知りましょう。問診票（ICIQ-SF※：国際尿失禁会議 尿失禁症状・QOL質問票）に回答することで、ご自身の尿モレ症状のレベルやタイプを簡単に把握することができます。事前に自分の状態を知っておくことで、医師にも症状を具体的に伝えやすくなります。
0〜21点で点数が高いほど重症となります。
（ICIQ-SF）
排尿日誌をつける
排尿日誌とは、1日の水分摂取量、摂取した水分の種類、排尿回数、1回の排尿量を記録するものです。自分の飲水量や排尿パターン、膀胱の容量などを把握でき、生活習慣の見直しや、排尿トラブルの理解に役立ちます。また、医師の診断や治療方針を決める際にも有効で、膀胱訓練や行動療法のサポートにもなります。
排尿日誌をダウンロードする
病院を見つける
女性の尿モレは、「女性泌尿器科」が専門に診療を行っています。お近くにない場合は、産婦人科や泌尿器科が窓口となります。持病がある方やかかりつけの医師がいる方はまずは担当医に相談するのがおすすめです。
服用している薬や基礎疾患によって、尿もれの症状が出るケースもあります。また、妊娠中の方は、通院中の産婦人科で相談しましょう。
実際に医師へ相談する
医師に相談するときは以下のポイントに沿ってお話しするとよいでしょう。
- 尿モレ症状の発症時期
- どのような時に尿モレが起こるか。どのくらいの量か。
- 尿モレ症状で不安に感じること
- 希望する治療の内容や方法
また、尿失禁症状・QOL問診票のスコアや、記録した排尿日誌を持っていくこともおすすめです。
医療費控除の
対象になる？
軽失禁パッド
【大人用紙おむつ（軽度失禁用）】は
医療費控除の対象商品です。
医療費控除とは？
自分自身や家族のために、その年の1月1日から12月31日までの間に一定額を超える医療費を支払った場合に、所得控除を受けることができる制度です。税務署へ確定申告することで、購入費の一部が戻ってきます。過去に申告し忘れがあっても、5年前までさかのぼって医療費控除を受けることができます。領収書は大切にとっておきましょう！
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